安房直子フェアー

＜なくしてしまった魔法の時間　安房直子＞
安房直子コレクション1

うわー、名作揃い！！これは買わねば。
きつねの窓、てまり、など名作だと思うけど、寿命を持て余すカメが村の人々に自分の時間を分け与える「だれも知らない時間」なんかは何もかもが秀逸。
そして恒例、巻末のエッセイで語られている、書くということに対する姿勢はとても感銘を受けました。おこがましいんだけど、自分もいくつかついて行ける感覚があって嬉しく思いました。

＜ものいう動物たちのすみか　安房直子＞
安房直子コレクション3
動物たちと人との童話集。「谷間の宿」は安房さんのものとしては異色ですねえ。ちょっとホラーに近い感じです。山奥でとっぷり日が暮れた時に、宿屋に泊まるのです。その宿屋は蚊帳張りです。時間と共に蚊帳をびっしりと蛾がとりつくのです、これはまるで虫かごに閉じ込められたようではないかと思う主人公。一瞬で立場がひっくりかえると快適だった宿は恐ろしい場所になっていた、という反転がすごく鮮やかで恐い話。あと私が好きなのは「花びらづくし」散りかけた桜並木の下でさくらや、という不思議な店が開店します。桜尽くしの商品に心奪われているうちに・・・という話。
安房さんの童話は、童話にありがちな常にハッピーエンドでは決してありません。
異界に迷い込んでそのまま帰ってこれなかったり、かわいい動物たちの誘いにのって見るととんでもないしっぺ返しが待っていたりとか、オチが読めないのです。物語の調子が静かで、美しい調子であってもラストで一変するということがよくあります。
わたしは、そこが好きになったきっかけなのでした。甘いだけではない、冷たくて、恐い童話です。