今公開中のアルセーヌ・ルパンの映画を見たのでそれの原作となっているこの本を読んでみたとです。
映画を見たときは、ああしまった、原作先に読んどくんだったなーと思ったのですが、本を読み終わってみると、映画先に見てもよかったかもと思いました。
ルパン二十歳の時の、本格的に盗賊デビューした時の話です。カリオストロ伯爵夫人と名乗る美貌の女盗賊が出てくるんですけど恋の話なんですな、これ!
女カリオストロとルパンは同じ財宝を狙うから互いに商売敵なのです。女カリオストロはルパンの謎を解く天賦の才が必要で、組織を持たない盗賊稼業ペーペーのルパンは女カリオストロの策謀と組織力が必要ででも二人を結んでいるものは恋だけで、他の全てが相違うのですね。
知略と策謀と愛憎渦巻く「カリオストロ伯爵夫人」でした。
そんで思ったんですが、ルパンってほんとに怪盗なんだなー。作者のルブランの生きた年代の特性や宗教観もあるのかもしんないですけど人を殺めるという事に対して、根本から否定しています。殺めることへの深い深い畏れや、畏怖、悔恨。殺めることに手を染めた者への激しい憤りや罵倒、侮蔑など、ほいほいと人を殺める現代にあってはみんなもっかいルパンを読んで考えるべきだ、なんちって思っちゃったよ。
知略に長け、出し抜き、物を頂く事に関しては屁とも思っていない、寧ろ楽しくてしょーがないし、それが天性でライフワークのルパンでも命だけは手を出せないわけです、そこにはポリシーというより畏怖があるんですな。うーん、なんかね命を畏れよって感じだ、かつて(って100年前だけど)はこれほどに命というのは畏敬されていたのだね、なんで今はこんなに軽いんだろ…。
目的の為なら手段を選ばずの女カリオストロですら自分ではやっぱり恐ろしくて殺める事に手は下せない、作中で誰かを殺めた登場人物達は一様に自分の罪深さと悔恨をずーっと背負い、己の悪事がいつ暴かれるかと心をすり減らしながら生きて行く、そういう心理描写も随所に書き込まれていて、作中では心理戦がよく出てくるのですが大変巧で面白かったです。

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